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やがて、雪がとけ、牧の里にもふきのとうが顔を出す季節がやってきました。かくまわれてくらす常盤の耳に、都のうわさがとどきました。年老いた母がとらえられ、常盤の行方をきびしくせめられているというのです。
「ああ、母上までがそんな目に………。」
そう思うと、いても立ってもいられません。源蔵夫婦に守られて、むじゃきに遊ぶ子どもの姿を見ながら、さんざんまよったあげく、とうとう心を決めました。
「都へ‥、もどろう……。」